高速はこだて号の旅
2010年12月5日
諸事情があり今夜は札幌にいます。現在の時刻、23時少し前。明日は、朝から函館勤務があります。JRも飛行機もありません。 さて、どうやって帰ろうか… 明日の仕事に間にあうだろうか…
以前、HTBの深夜番組、”水曜どうでしょう”でも人気だった深夜バスがあるのです。 今夜は、遅くなるのが分かってたので、あらかじめ深夜バスを予約していました。番組でも紹介されていた路線で、当時は、オーロラ号と言う名で呼ばれ、高速道路を使わず函館に向かっていました。現在は、高速道路を利用し、名前も”高速はこだて号”と改名されてます。 番組からは、過酷な旅との印象が強いのですが、さて実際はどうでしょう。さっそく乗車してみました。 (高速はこだて号の旅 ザ・ムービーも見てね)
旅の始まりは、中央バス札幌ターミナル。しかし、長旅の前には、それなりの備えが必要です。
今夜も晩酌は済んでいるのですが、ターミナル近くのセイコーマートへ立ち寄り、お茶とお菓子、それと万一の空腹に備えておにぎりを2個購入しました。
この時はまだ、これらの購入品の大部分が意味のないものであったことは知る由もありませんでした。
買い物を済ませ、バスターミナルへ向かいます。
ここ数日、天気は不安定でしたが、今夜は雨は降っていません。
目の前のテレビ塔の電光時計は、ちょうど11:00を示していました。
”水曜どうでしょう”では、深夜バスに出演陣もディレクター陣も毎度こてんぱんに打ちのめされていて、それがまた面白おかしく、放映終了後は、DVDを購入し繰り返しみています。他人事であったその深夜バスに、これから乗り込む訳です。いつもの旅の始まりのワクワク感とは違った興奮を感じます。これまであまり感じたことのない不思議な気持ちです。
セイコーマートを出て、右に向かうとすぐに歩道橋があり、そこを渡ると大通バスセンターです。
”どうでしょう”をみていたら、確か、鈴井・大泉氏は、歩道橋を渡りこの”バスセンター”に向かったように記憶しています。しかしチケットを見ると乗り場は、”中央バス札幌ターミナル”となっており、地図も微妙に目の前に見えるバスセンターの位置とずれています。これらは、同じものなのでしょうか。
まあ、行ってみればわかるでしょう。
歩道橋が、工事のため渡ることができず、地下通路をくぐり抜けてゆくことになりました。
この時間、人の姿はほとんどありません。自分の足音だけが、通路に響き渡ります。
ますます不安感が強くなります。
地下道をくぐり抜け、再び地上へと向かいます。
ちょうと大通バスセンター地下1階にあたる場所までのぼってきたとき、目の前に”オーロラ号”乗り場が!
以前、”どうでしょう”で見たオーロラ号は、やはり大通バスセンターから出ていたようです。
現在は、乗り場の看板だけが外されずに残っていますが、乗り場そのものは使われていないようです。
高速はこだて号の案内もなく、今回の乗車場所でもないことが分かりました。やはり、中央バス札幌ターミナルと大通バスセンターは別物なのかな。
詳細地図を発見。やはり、今いるバスセンターと中央バス札幌ターミナルは、となりあって建つ別の施設でした。
バスセンターを過ぎて、道路を一本渡ったところに本日の旅の出発点、中央バス札幌ターミナルがあるようです。
そうと分かれば、先を急ぐことにしましょう。
地上にあがり、地図にあった通り道路を一本渡ったところ、ターミナルの裏手に、最近新しくなった劇団四季劇場が見えました。そういえば、先日ニュースでもやっていました。ただ聞き流していただけでしたが、思いもかけぬかたちで、本物を見ることができました。
記念にパチリ。
ここが本日の旅の、まちがいのない出発点。
買い物を済ませ、小便も済ませ、旅の準備万全です。
いろいろな先入観もありますが、なんにしても旅は楽しいものです。
それでは、出発です。
高速はこだて号の出発は23:55。
アナウンスの説明によると、1号車、2号車、ふたてに分かれて函館へ向かうとのこと。思っていたより利用者は多いようです。
函館だけではなく、釧路、斜里、網走などの地名も見えます。
待合では、これまた思ったより大勢の人が、みやげ袋や大きなかばんをかかえ、バスの出発時刻を待っています。みんな、今の心境は、どのようなものなのでしょう。旅への期待と興奮でドキドキしているのは、自分だけなのかな。
出発10分ほど前に、乗り場に高速はこだて号が入線してきました。さっそく乗車。
乗車前にチケットの確認がありました。降りる停留所を一人ひとり確認しています。寝過ごし防止のサービスなのでしょう。これなら安心して熟睡していられます。
今のところ、希望に胸ふくらむバスの旅のはじまり、といった状況です。
事前に聞いていた通り、普通のバスと違い3列シートとなっています。テレビ、トイレも設置されています。バス自体の大きさは、おそらく他のバスと同じようなものでしょうが、3列とはいえ座席の前後左右の間は、十分広いとは言えません。むしろ、多少窮屈に感じるくらいです。やや大きめの荷物を持参したならば、身の置き所に困ることになりそうです。
幸い、大きな荷物は、乗車前に車体下収納に預かってくれるので、積極的に利用したほうがよいようです。
シートに座り、間もなく発車。さきほどチケットの確認をしてくれた方が、一緒に乗り込んできて、さまざまな説明をはじめました。途中、サービスエリアには停車しないこと、テレビもみれるが、やがて消灯となり消えてしまうこと、カーテンは開けてはいけないこと…
「えっ、すぐに消灯なの?カーテン開けたらダメなの?せっかく買ったお菓子やおにぎりは食べれるの?」
急激に空腹感が襲ってきます。カーテンが閉め切ってあるため、今どのへんを走行中かもわかりません。にわかに膨らんできた大きな不安感に包みこまれます。
とはいえ、小一時間ほどは、消灯などないだろうと思っていたら、乗ってから30分も経たぬうちに、いきなり消灯となりました。テレビは消され、車内灯は落とされ、驚いたことに運転席うしろにも全面カーテンが張られ、ほぼ真っ暗闇となりました。他の乗客も、これではなすすべなしと諦めたのか、みなそれぞれ眠りにつこうという雰囲気が感じられます。
相変わらずバスがどういうところを走行しているのか分かりません。時々停車しながら走っているので、まだ高速道路には入っていないのでしょう。
それにしても空腹、窮屈。朝まで耐えられるかな?
出発して1時間経ったでしょうか。狭くて身動き取りにくいのと、静かで物音を立てられないのとで、まともに携帯電話もいじれません。時計も見えないので、正確な時間経過もわかりません。
こっそりカーテンの隙間から撮影をこころみましたが、何が写っているのか分かりません。
まだ、全く眠くなりません。リクライニングシートにフィットできないのか、緊張しているせいなのか。
さらに、1時間くらいして、たぶん眠ったのでしょう。でも、寝れなく身の置き所がなく苦悶している夢を繰り返し見ます。いや、夢ではなかったのかもしれません。
それでもバスは、確実に函館へ近づいてゆきます。
その後も、何度となく寝ては起きての繰り返し。何度目かの目覚めで、アナウンスがありました。「七飯町で降りられる人はいませんか?」いや、おそらくアナウンスにより目覚めたのでしょう。間もなく函館だと分かりました。もうろうとしながらも、バスは市内各所に停車してゆきます。今回の旅の終わりは、湯の川北バス停を考えていました。この時間、市電も市バスも動いていないので、タクシーで帰るともっとも近いバス停です。
函館駅を過ぎ、海岸線を湯の川温泉街へとバスは向かいます。バスがホテル啄木亭の前で停まりました。ここが今回のたびの終着点です。正直辛かったけど、ガイドの方は、常にとても親切でした。運転もとても優しく、降りるときには、心からお礼をしてきました。