赤絵浜弓本店
函館市本町1-5
2010年12月16日
昨日から、急激に気温がさがり、冬本番を感じさせる粉雪が降り積もります。雪道をきゅっきゅといわせながら自宅から歩くこと約5分。赤絵浜弓(あかえひんきゅう)本店に到着しました。
今夜は、ここで、仕事でお世話になっている会社の方々との会食です。忘年会シーズンにも重なり、連日の”ぶらり食べ歩き”となってしまい、贅沢病に罹患してしまう心配もありましたが、大切なお付き合いゆえ、赤絵浜弓にて今夜も晩酌です。
函館中央病院から、電車通りを渡った向かい側の繁華街の中にお店はあります。
居酒屋やスナック、パブなど立ち並ぶ”のんべえ”の人たちの楽園のような通りの中に突如として、たくさんの木々に包まれた優雅なたたずまいの木造建造物が現れます。中からは、懐かしく暖かそうなオレンジ色の光が洩れ、夜の木々を彩ります。
行き慣れない雰囲気に、にわかに緊張感を高めつつ、お店の入口へと向かいます。
入口へ向け、歩みを一歩ずつ進めるにつれ、鼓動が早くなってきているのを感じます。
玄関扉を開けた時、緊張は頂点へと達していました。
お店の方が出迎えてくれます。ハイソなトゲトゲした和風マダムでも登場するのかと思っていたら、とても親切で優しそうな女性が声をかけてくれました。ちょっと一安心。
店内は、格調高い和風造りですが、ところどころにモダンな装飾が施され、訪れる人をとても暖かく迎え入れてくれる、そんな印象でした。
2階の個室へと案内され、知っている顔をみて、さらに安心。
落ち着いたところで、今夜の料理への期待と喜びが膨らんできます。
挨拶がわりに、まずは乾杯。アサヒの生ビールでした。
本日も朝から晩まで仕事は多忙。多忙に比例して、いや多忙の2乗に比例して、ビールにありつけた時の感激は大きなものになります。
ぷっ はぁ~ うまい!
あんこうと言えば、鍋、あんきもなどが思い浮かびますが、あんこうの肝と身、皮を味噌で和えたものも、道南、青森地方では、好んで食べられるそうです。とはいえ、自宅では、好んでも食べられないわけで、珍味登場となった訳です。
あんこうの皮や身の弾力あるブヨブヨ感に、肝&味噌の織りなす、爽やかな甘い風味がからみついてきます。
外は厳しい冬の寒さ。暖かい部屋の中で、こころときめく珍味をいただき、本日はやくも日本酒モードへ切り替えです。
以前、少しの間、留萌に勤務していたことがあり、その際にお気に入りだった、増毛国稀酒造の鬼ころしをいただきます。
くせのない辛口のお酒は、珍味の大切な味わいと風味を殺しません。珍味とともにいただくことで、お酒の味わいは広がります。
真たちです。今年は、いろいろな形でいただくことができました。たちポンもたちてんも美味です。
今夜は、すり流し汁。流動体となった”たち”、いただくのは初めてです。たちが擦りおろされることにより、汁にかすかなトロミが加えられるそうです。
まず、立ち上る湯気に、たちのまろやかな香りを感じます。口に含むと、たちの中に閉じ込められていた繊細な旨味分子が、汁の中に均等に拡散してくるのが感じられます。何度食べても、珍味です。
マグロ、ボタン海老、ウニとツブの刺身です。
日本酒とともにいただくことで、上質なマグロの旨甘さが引き立ちます。海老のミソに詰まった、磯の香りが広がります。粉雪がはかなく消えてゆくかのような、ウニの上品な甘さが光を増します。ツブのコリコリに潜む力強い味わいが一層強さを増してきます。
醤油のしょっぱさを抑えた、柔らかく甘~い十勝の和牛で、辛みの効いた細ねぎを巻いてあります。口の中で咀嚼され、さらに深く交わり合うことで、和牛の旨味が究極の珍味へと変貌を遂げます。
銀カレイは、通常のカレイよりも数段、脂ののりが良く、特別な甘みを感じます。ウニも磯の風味と、ふわああぁぁ……と溶ける食感、それに甘みが勝負の珍味の王道です。この二つの甘み珍味が一体となった時、それぞれの甘みが打ち消しあうと思いきや、予想に反し、全く新しい、旨甘珍味として生まれ変わります。説明に困ってしまう、初めての味わいでした。おいし~ぃ!
今では、高級魚のハタハタ。特大の子持ちハタハタの蒸し物です。まず、そのままいただきます。
身は、有るか無きかの、かすかな弾力を備え、味は、ふわんと甘みを伴います。溢れんばかりの抱卵は、身とは裏腹に、存在感に満ち溢れた弾力と、タンパクな味わい。親子で全くことなる性質で楽しませてくれます。
さらに、ポン酢でいただくと、酸味の働きで身の甘さが強調され、卵の味に輪郭が現れます。
今夜も、飲酒速度は、品を重ねるごとに加速します。
なんと、ウニの天ぷらです。想像すらしたことのなかった調理法です。ウニは、生一筋であった自分にとって、これは驚愕の一品となりました。
ウニは、火が通ることで、ウニの命とも言える、あの はかなく消えゆく食感が失われる、と思われましたが、表面にパリパリカリッとした衣をまとうことで、相対的にウニ特有の”消えゆく食感”が保持され、同時にウニの味わいが非常に濃厚になります。
全くもって今夜は、未体験ゾーンに突入したま、抜け出すことができません。嬉しいかぎりです。
この時期のカキは、旨味がぎゅっと凝縮し、まことに味わい深く、どんな料理でも美味しくいただける、喜びの食材です。今夜は、男らしく(?)トゥルンッ!!と生でいただきます。
目を閉じていてもそれと分かる独特の味に、とろけるような甘みを感じます。複雑な形態からつくられる、パーツごと異なるぶよぶよ、ぷよぷよ、つるんつる、ぺらぺら、ちゅるりん食感が、噛むことによって混ざり合い、旨味を増します。
もう満腹。こんやも美味しい料理をたくさんいただきました。
比較的親しい方との会食であったので、話に花が咲き、またしても忘れてしまいました。本当は、甘くて美味しい銀たらの鍋があったのです。写真を撮っていません…
鍋を食べ終えた後、残り汁で雑炊を作っていただきました。
うす味で、銀たらのダシがの風味がとても感じられる、”のんべえ”泣かせの雑炊でした。
さいごに、ほのかに酸味のきいた洋ナシです。サクッ、ではなく、さくぅーという感じがおもしろい果物です。日本のナシと比べると、甘さも控えめで、お酒の〆としては、なかなかグッドなチョイスでした。
外は雪が降り続いています。いよいよ本当に根雪となってしまうのかもしれません。明日の朝は、除雪しなくちゃならないのかなぁ。
今夜も、胃袋がとても喜んでいます。ごちそうさまでした。