夢のトイレ75 目の前には見慣れた寝室の天井と照明。左側の窓からはカーテン越しに外の明るさが透ける。 「夢か」 ボクは修飾する言葉もなく一言そう頭の中で呟いた。それにしてもひどい夢だった。それにしてもリアルな便意だった。でも、その便意も今はない。便意のない朝に、これまでにない最高の喜びを感じる。外から遠く聞こえる市電の走る音にも優しい気持ちになれる。微かに感じられる尿意には幸せすら感じる。ボクはベッドの上に起き上がり大きく伸びをした。今日は日曜日。まだまだゆっくり寝ていられるのだが、なんだか訳もなく動き出したくなってきた。「よしっ」 今度は言葉に出して言いボクはベッドを抜け出し洗面所に向かった。そしていつものように冷水で顔を洗った。今日は本当に温泉宿を目指して旅に出ようかな。もちろん他の誰でもなく、ボク自身が計画する旅にである。時刻は午前7時。今からなら少し遠くまで行ける時間だ。タオルで顔を拭きながら階下に降りた。旅の準備の前にまずはトイレだ! 尿意はあるが便意は感じない。でも、踏ん張れば少しくらい出るだろう。あんな思いは、もうこりごりだ。そしてボクは居間の隣にあるトイレの引き戸を開けた。するとトイレの蓋がボクを検知して自動的に開いた。 (おしまい)
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