夢のトイレ71 それはあまりにも唐突だった。不意を突かれたようにボクの下腹部の奥で便意が膨れ上がったのです。それは例えるなら車の衝突でエアバッグが瞬時に膨らむように、いや、それはちょっと大袈裟すぎかな。例えるなら七輪の網の上で餅がプッっと膨らむように、いやいや、そんな可愛らしい便意ではありません。例えるなら、そうねえ、ゴム風船に息を吹き入れ、伸展限界圧を超えた瞬間にフワッって急に膨らみ始めるような、何かそんな唐突さで、しかも急速に便意が膨らんできたのです。ボクはうろたえました。下腹部の鈍痛と肛門のヒクヒクいう小刻みな動きは、街まで戻る猶予がないことを知らせていた。するとそこで、あまりに出来すぎたように左前方に林道からさらに奥の山道へと入ってゆく小道が現れたのです。そこは車が1台ようやく通れるほどの道幅の狭い上り坂でした。でも、明らかにタイヤ痕があります。車で進入できるということです。迷うこともなくボクは車を左折させました。そして30メートルほど進んだところでしょうか、そこだけ道幅が少し広くなっていました。おそらく対向車がきた場合にすれ違うためのものでしょう。ボクはそこに車を止めました。 (つづく)
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