夢のトイレ67

夢のトイレ67  内肛門括約筋は間違いなく弛緩しているのが分かる。今は体性神経、つまり自律神経とは異なり随意的に制御しうる運動神経により支配されている外肛門括約筋によってのみ排便が抑えられているのを知った。副交感神経の作用により直腸内圧はみるみる上昇してくる。ああ、もうどうあがいても逃げ場はない・・・  便意のない平穏な時、あの時どうしてボクは、そのありがたさに気がつかなかったのだろう。朝から晩までびっしり仕事が忙しく、誰をというわけではなく恨めしく思ったあの日、今ではその一日までもが羨ましく思える。体がかつて経験したことのないような異常感覚に支配され始めた。全身が硬直して頭のてっぺんから崩れ始めるようだ。もう本当にダメだ、そう思った時だった。直腸の中に何かほんのわずか、ひんやりと冷たいものが入り込んできたように感じた。海水が入ってきたのか? 今のこの膨れ上がった直腸内圧より水圧の方が大きいというのか? いや、でもこの冷たさは明らかにこの海水のものだ。穏やかで濁りのない海水の中に、憎悪の花火が打ち上げられる映像が脳裏をかすめた。それはボクの想像が創り出したものなのか、それとも今ボクは、とうとう最悪の事態を実際に目の当たりにしてしまったのか。気が遠くなる。意識が薄れ全身の力が抜けてゆく。でもボクは独り・・・  (つづく)