夢のトイレ61 海水面は膝下のところまで来ている。やっぱり戻ろうか・・・ しかし、恥骨の奥の方で荒れ狂う鈍痛と便意は、それを許そうとはしてくれない。どこまでも遠く続く海と、大きすぎる空の間に挟まれながら、ボクは独り泣き出したくなった。あの二人の策略にのって排便を済ませておいたほうが良かったのかもしれない。どうしたらよいのか決められないまま、ボクは少しずつ少しずつ海の奥へと進んでいた。早春の冷たい海水が太ももの高さまで上がってきた。このまましゃがめば、ここで用を足すことも可能だ。海水は透き通り、海底の砂が美しい波紋を描いているのが見える。ここへ放出すると、ボクのそれは、この美しい景色の中にどのような変化をもたらすのだろう。過去の排便経験からすると、今の直腸内のそれは個体ではありえない。おそらくゲル状の流体のはずである。したがってそれらは水中において拡散するのでしょう。そしてそれは拡散しながら浮上するのか沈降するのか、あるいは一定の深度を保って漂うのか・・・ 個体のやつなら、なんとなく浮いてくるイメージがあるが、流体の場合はどうなのだろう。すると今度は「アルキメデスの原理」という言葉が思い浮かんだ。 (つづく)
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