夢のトイレ59

夢のトイレ59  便意は切迫していたが、ボクはそこから先へ進むことがなかなかできなかった。本当に海の中で排便などできるだろうか。ボクは魚ではないのだ。こんなことなら、さっき魚だったうちに排便を済ませておけばよかった。しかし、そうは言っても後の祭り。あの時は便意など感じなかったのだから仕方がないのだ。ガスなのか便なのか、何かがしきりに直腸壁を進展させ更に強い便意を誘発する。そんな状況なのにボクは、妙に冷静に靴と靴下を脱ぎ始めた。ズボンはどうしよう・・・  この後の旅の続きを考えて、やはり脱いでおくことにした。ボクはユニクロの足つきぴったりパンツ姿となり、勇気を出して足を踏み出した。波打ち際の砂はとても冷たいが、その感触は懐かしい。子供の頃に行った海水浴を思い出す。ボクがよく行ったのは、留萌市の北にある小平町の臼谷海水浴場だ。夏になると海の家が立ち並び、週末は道央圏からもたくさんの海水浴客が集まってきた。砂浜海岸なのだが海は深く、腰まで水に浸かったと思ったら、その先何メートルもゆかないうちに足がつかなくなってしまう。子供ながらにも溺れないように注意しながら泳いだことを思い出す。裸足の足先に小さな波が届いた。思っていた以上に水は冷たい。 (つづく)