夢のトイレ54

夢のトイレ54  突然、尾てい骨のあたりを蹴り上げられ後頭部を重量感のある物で強烈に殴打されたような衝撃を感じた。 「うっ」 出そうともしていないのに嗚咽がもれた。そしてすぐに状況を理解し下半身に意識を向けたが奇跡的に便は漏れていなかった。そこでボクは不意に思った。便意にもがき苦しみながら高所から転落したのは世界でボクが初めてなんじゃないかと。「ギネス」という文字が頭に浮かんだ。しかし「ギネス」は世界一の挑戦記録のことであり、ボクのは挑戦でも記録でもないわけで、決して「ギネス」とは呼べないことに気がつき、ボクは独り苦笑した。「まったくもって、とんだ一日だよ」ボクは独り言を口にしながらゆっくりと起き上がった。痛さが落ち着いてくると相対的に便意がますます強く感じられるようになってきた。不用意な腹圧が加わらないように注意しながら、ボクは砂浜を海に向かって歩き始めた。 (つづく)