夢のトイレ53 ボクの両手は、ジャンケンの「パー」の形のままコンクリートの上を細かく上下に振動しながら手前に向かって動いてきた。それとともに下からせり上がってくるコンクリートの壁にボクの視界は遮られ、間もなく両手は見えなくなってしまった。その後もコンクリートの壁は上昇を続け、今度は向こうへ倒れるようにボクの体から遠ざかってゆく。コンクリートの上縁に再びボクの手首が見えた。手首に引きずられるように「パー」に開いた手のひらがコンクリートの縁から青空の中へ飛び出した。いったい何が起きているのだろう。ボクの両手はボクの頭上を後方へと通り越してゆき、今ボクは春の明るい青空を見上げている。なんとも爽快な気分だ。ついさっきまで何かとんでもない苦痛を感じていたような気もするが、今のこの最良の気分に浸っていると、そんなことはもうどうでもよい事だと思える。この瞬間がいつまでも途絶えることなく、ずっと永久に続いて欲しい。ああ、気持ちがいい・・・ ところで今ボクは、どこで何をしているのだろう。そう思った次の瞬間だった・・・ (つづく)
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