夢のトイレ51

夢のトイレ51  運転席のドアノブに手が届いた。手首のスナップを効かせて、できるだけ最小限の体の動きでドアを開けた。そしてドア枠の上の手すりにぶら下がるようにしながら運転席に這い上がった。ありがたいことにこの瞬間、便意が10段階の9くらいまで低下してくれた。ボクはすぐさまエンジンを始動して車を発進させ、車の左側面を堤防ギリギリに寄せて停車させた。大丈夫、便意はまだ押し寄せてこない。再びボクは車の外に出て、今度は後部座席のドアを開けた。ボクの車はワンボックスタイプで、後ろのドアはスライド式になっている。そしてさきほどやったようにドア枠の手すりにぶら下がるようにして後部座席へと乗り込んだ。さらにそのまま反対側のドアへ近づき、それを内側から開け放った。想像した通りだ。目の前の防波堤はボクの腰くらいの高さになっている。なんのことはない、車の床を防波堤に上がるための踏み台にしたまでのこと。そこから堤防の上に移るのは容易なことだった。便意が10段階の9であったことも幸いした。 (つづく)