夢のトイレ50

夢のトイレ50  肛門括約筋には、もう感覚が残っていない。それなのにどうして今もまだ緊張を保持できているのかが不思議なくらいだ。ボクは肛門の緊張が緩まないことを祈りながら、ゆっくりと四つん這いになり、それ以上、上体が屈曲して腹圧が加わらないように注意しながら慎重に立ち上がった。ボクの頭の中では、別のもう一人のボクが「もう時間がない」と告げる。「早くしろ」とせき立てる。しかしボクは、その声を無視して、さらに動きを緩めた。両足を引きずるように少しずつ少しずつ前へ進み、車との距離を縮めていった。「もっと急がないと出てしまうぞ。それとも今すぐに出して楽になるか?」 頭の中のボクは、繰り返しまくし立てる。しかしボクは、それに返事をすることもなく車に向かって進み続けた。 (つづく)