夢のトイレ48 それでもボクは、肛門括約筋の緊張を緩めることなく慎重な運転を続けた。国道から海に向かう小さな脇道を見つけた。そこに入り少し進むと間もなく海岸線に沿って走る道にぶつかった。道路の海側の端には防波堤が連なっている。海に入るには、この腰くらいの高さの防波堤を越えねばならないが、それがかえってボクの姿を遮る防御壁となってくれるようで嬉しかった。道路の端に車を止め、辺りをうかがいながらゆっくりと車から降りた。周りには建物や高い丘もなく、草原と海が360度たいらに繋がっている。その景色の中に二人の姿はなかった。そうだ、これはボクが自分で立てた計画だ。この中に二人の姿などあるはずがないのだ。ふふふふふふ。いやいや、笑っている暇はない。恥骨の奥の鈍痛は既に限界を超えている。強大な便意のために上手く力の入れられない両足をかろうじて押し出しながらボクは防波堤へと近寄った。腰くらいと思った防波堤は意外と高く、ボクの胸の高さくらいあった。左右を見渡すが高さはどこも変わらないようだ。便意のない健やかな時ならば苦労することもなく登れる高さだが、今の便意なら無理だ。その時、突然便意が増大した。そして、その直後に肛門を何か小さなものが通過した。一瞬、便を漏らしたかと錯覚したが通過したのはどうもオナラのようであった。文字通り大きな壁にぶち当たってしまった。自分で立てた計画通りに進んでいるのに、急にボクは悲しくなった。 (つづく)
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