夢のトイレ42

夢のトイレ42  車を道路の左に寄せシフトレバーを「P」に入れた。そしてハザードランプを点灯させるや、ボクは助手席の足元に転がるビニール袋を拾い上げた。急いで中からカバンを取り出そうとするが、きつく縛った袋の口は、なかなか開いかない。目を凝らして結び目の状態を分析しようとするが、便意に翻弄された頭が言うことを聞いてくれない。その時不意に「伊東家の食卓」で紹介されていたビニール袋の結び目を簡単にほどく方法というのを思い出した。結び目の先端のビニールをくるくるねじって細くする。柔らかいビニールもしっかりねじると硬くなる。それをそのまま結び目の中心に押し戻すのだ。するとどうだろう。さすが伊東家である。ビニールの先端を押し込むや結び目は、先ほどまでの強固な緊張をすぐさま解きほぐし、ふんわかと広がった。ボクは直ちにビニール袋の口を開いた。異臭を覚悟していたが中からは何も匂いはしなかった。中のカバンを助手席の足元に放り投げ、ビニール袋を片手にいったん車の外に出た。そして後部座席に乗り込みドアを閉め、上体を低くしながらズボンを下げようとしてボクは絶句した。 (つづく)