夢のトイレ41 駐車場を見渡すと、止まっているのはボクの車だけだった。あの二人もこの扉から外に出たのだろう。そして、どこからか今のボクの姿を見て笑っているのだ。便意に苦悩するボクが、便器を見失って狼狽している姿を見て嘲笑っているのだ。おもいきって野糞をしようかとも思った。しかし、それこそ彼らの思うツボだ。ボクは尻の穴の緊張を緩めないように慎重に歩きながら車に戻った。仕方がないので当初の計画通り八雲の街の中にトイレを探すことにする。そのトイレにもまた、彼らは仕掛けをしているのであろうが。エンジンを始動し車を発進させる。最大級の便意をこらえているため額には変な汗がにじみ出ているのが分かる。アクセルを踏み込む右足もヒクヒクと震え続けている。まさに一触即発の事態である。少し進んだところで信号が赤に変わってしまった。出そう・・・ 力なくうつむいたボクの視界に、汚れたカバンを突っ込んだままにしてあるビニール袋が映った。もうこれしかないと悟った。 (つづく)
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