夢のトイレ29

夢のトイレ29 交差点の手前まで来たとき信号が赤に変わった。おもいきって突っ切ろうとも考えたが、信号無視で捕まるのを恐れて急ブレーキを踏んだ。交差点には左右にも前方にも他の車の姿はない。ボクは視線をバックミラーへ向けた。視線を向ける直前になんとなく予感はしていたのだが、ミラーには、あの白い乗用車が映し出されていた。震える手足は、さらに強くガタガタしはじめた。わずかに視線をずらし信号を見るが赤のままだ。そして再びミラーへ視線を戻すと、目をそらせていた時間経過からは考えられないほど近くに車が接近していた。恐怖と絶望のためなのか、ボクはミラーの中の車から目をそらすことができなくなっていた。そして気がついた。車には二人乗っている。急速に車が近づいてくる。中の二人の顔が見え、表情までもが確認できる。どういうことか、今はミラーの枠よりも二人の姿が大きく見える。 (つづく)