夢のトイレ28 ボクは車の中から店内の様子を確認した。レジには誰もいないようだ。あの男はどうした? ここから見える限りでは、店内に人の姿はない。少し離れて停まっている白い車にも、もちろん誰も乗っていない。みんなどこへ行ったのだろう。いや、そうだ・・・ トイレに行ったに決まってる。トイレでお金を確認しているんだ。そう読んだボクは、ギアをバックに入れ静かに車を発進させた。そして車を反転させ再び国道に乗り入れた。北に向かおう・・・ 函館の街から少しでも離れたほうがいい。ボクは、速度超過に気をつけながら震える足でアクセルを踏み込んだ。ローソンを過ぎると周囲の木々が途切れ視界が開けてくる。空の色も青空というほどではないが、幾分明るさを増してきたようだ。右手にはラッキーピエロが見えてきた。昼には広い駐車場に車を止められないほど混雑するが、営業前の今は閑散としている。そのラッキーピエロを過ぎた次の交差点を左折すると大沼公園ICがある。少しでも早くあの場所から離れたい一心で、ボクは左折レーンに車を進入させた。 (つづく)
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