夢のトイレ27

夢のトイレ27  ボクがトイレから出てくる様子は、店内の防犯カメラにとらえられていただろう。しかもカバンを不自然に両手で抱えている姿だ。お金の事を知る人物が警察に通報すれば、ボクがそれを持ち去ったということはすぐに分かってしまう。額からは変な汗が噴き出している。意識がもうろうとしてきた。元の場所に戻しにゆくか・・・  いや、それもできない。客の少ないコンビニでトイレに何度も行き来するのは、かえって不審に思われてしまう。ボクは腰が抜けた力のない歩き方で自分の車に戻り、かろうじて運転席についた。そして車内のゴミ箱に設置していたビニール袋を外し、その中にカバンを入れて口をきつく結んだ。それを助手席の足元に放り投げ、すぐにエンジンを始動させた。まだ手足が震えている。これからどうしよう。春の温泉宿なんて無理だな。 (つづく)