夢のトイレ23 音は聞こえないがドアの向こうからは息づかいが伝わってくる。そうだ、とにかくここは個室なんだ。ボクが何をしようと誰もそれを見ていない。ボクは音を立てないようにして立ち上がった。そしてショルダーバッグの口を開け、便器の底に浸っている札束を手で引き上げて急いでバッグの中に押し込んだ。それから再び、今度は本当にズボンも下着も下げて便座に腰掛けた。思い切りいきんでみた。しかし何も出てこない。さっきまでの便意はウソだったのか。両手で下腹部を押し付け少し前かがみになりながら、なおも強くいきみ続けた。額からは汗が流れ出し膝にポツポツと染みをつくる。しかし、いっこうに目的のものは出てこない。しかし、いきんでいる様子は外の人に伝わっているだろう。ボクは声にこそ出さず、しかし明らかに大げさにいきみ続けた。 (つづく)
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