夢のトイレ20 「いらっしゃいませ」 店員がそう声をかけてくれたのと同時に、雑誌コーナーにいた中年男性も横目でボクの方を見たような気がした。やはり彼なのか。ボクは、その視線を無視して、そのまま真っ直ぐレジの前を通過して弁当コーナーへと向かった。陳列棚の前には、届いたばかりの弁当がプラスチックトレイに入れられたまま積み重ねられていた。ボクは、ゆっくりと品定めをするフリをしながらトイレの入り口へと近づいた。そしてドアの窓からトイレの中をうかがった。特別な変化は起きていない。思い切ってドアを開け中に入ってみたがトイレの個室は空いていた。ということは、やはり雑誌コーナーにいた男性が白い車の持ち主ということになる。しかし不思議なことにボクは、問題がひとつ明確になった満足感よりも、懸念していたことが何も起きなかった現状に苛立ちを覚えていた。ボクは個室のドアを勢いよく乱暴に開け放った。するとそこには・・・ (つづく)
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