夢のトイレ17 

夢のトイレ17  トンネルを抜けると朝もやに霞んだ大沼が見えてきた。天気が良いと雄大な駒ヶ岳を背景に望むことができるのだが今日はわずかに裾野の輪郭が見える程度だ。しかしボクは、この薄暗くて少しさみしい風景も嫌いではない。片側1車線の道路はその後、谷間を縫うように山あいの道を進んでゆく。左手には蓴菜沼が見えてきた。ここを過ぎてもう少しゆくとローソンの看板が遠くに見えてくる。「あ、あった」 そう思ったのと同時だった。1台の車が猛スピードでボクの車を追い抜いていった。見覚えのある車、そう、決して見間違えることのない白の乗用車。そして間もなくボクの予感はまたもや的中した。車はブレーキの音を立てながら急峻な動きでローソンの駐車場に進入していった。おさまりかけていたボクの鼓動は再び激しく連打し始めた。 (つづく)