2015年3月26日テロップ記事

326日 道はすぐに左に折れ、数分もしないうちに遮断機の場所にたどり着いた。この先は、大きく右に弧を描きながら道は下ってゆく。前には杉の木が林立し、その先の風景を覆い隠している。背中に強い風を受けながらボクは坂道を下っていった。車は1台も通らず歩く人影もない。そして10分ほど歩いただろうか。道路は大きく左右に蛇行しながら下り続ける。やっぱり戻ろうかな・・・  しかし、向かい風の吹雪ののぼり坂を戻るのも気が引けた。考えが定まらぬまま更に10分ほど歩き続けると急に杉林が途切れ左手に海が広がった。すでに日は落ち波の様子を見て確認することはできなくなっていたが、風の合間に聞こえる波の音で、その様子は容易に想像できた。寒さが限界に近づく頃、道路は平坦となり、その先に黄色やオレンジの光の集合が見えてきた。道は海に接し、ガードレールから数メートル下には垂直に吹き上げる波しぶきが見えるようになった。指先や足先が凍え痛みを伴ってきた。旅館がなくても、とにかくどこかに入って暖を取ろう。陸から海に吹きすさぶ横風にも耐えながら、ボクは目の前に見えている光を追い求めるように歩みを速めた。 (つづく)