2015年3月24日テロップ記事

324日 扉が開いた途端、車内に強風が吹き付けてきた。ボクは左手で襟元をおさえ、右手で肩掛けカバンを抱えながら列車を降り駅舎へ急いだ。今ではあまり見ることのなくなった木製の引き戸を開けて中に入った。ここは無人駅で暖房もなかったが、風がしのげるだけでありがたかった。駅舎の中は、幼少時期に木造の駅や古い食料品店などでかいだことのある懐かしい匂いがした。中央にはすすけたような水色のプラスチック製のベンチが2組、背中にアイスクリームの宣伝を背負って置かれている。左右の壁には、いつから貼られているのか、黄ばんで哀愁漂う大きな旅行ポスターが貼られている。古き昭和の時代を映すセピアカラーの中にあって唯一平成カラーなのはアクリル製の時刻表だけだった。列車本数が少なく空欄だらけの時刻表に物珍しさを感じながら、もう一度次に停車する列車の時刻を確認する。1910分(普)。うん、間違いない。もしも、ここで宿が見つからなければ、この列車で更に先に行けばいい。ボクは上着のファスナーを一番上まで上げ寒さ対策を万全にしたのを確認して、それでも恐る恐る駅舎を後にした。 (つづく)