3月23日 そのまましばらく海岸線を走り短いトンネルをひとつ抜けたところで列車は減速を始めた。車内アナウンスは次の停車駅を告げている。聞いたことのない地名だ。外では雪が降り始め夕闇を早めている。そろそろ下車して今夜の宿を探そうか。遠くの方から遮断機の音が近づいてきた。ボクはカバンの中から急いで時刻表を取り出した。この駅に次に来る列車があるのか確認したかった。ここで下車したとして、雪の中もしも宿が見つけられなければ一大事だ。ページをくくりアナウンスにあった駅名を探す。あった。おおよそ3時間後に後続の列車が停車する。時刻表をカバンに戻しカップ酒に1/3ほど残った酒を一気に飲み干した。外を見ると遮断機の前で上着のフードを大きくかぶり両手でおさえ吹雪に耐えている女性と思われる姿があった。列車は遮断機を過ぎたところで停車した。小さな木造の駅舎と1本の短いホームがあるだけの駅だった。 (つづく)
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