枕木山荘で秘湯を体験
木古内町亀川342
2010年11月19日
冬は、やはり温泉にかぎります。連日雪が降り続き、あまり遠出もできないと考え、函館より西へ40kmほど、木古内町にある枕木山荘へ出かけてみることにしました。
木古内は、出張で何度も訪れていますが、その通り道に、いつも気になっていた看板があります。木古内市街まであと少しというところ、道路右側に緑色の看板で「枕木山荘」と表示されています。気にはなっていても、行きそびれていました。
思い立った時が、出発の時。常に備えてある温泉道具一式をかかえ、エンジン始動!
午前10時ちょうどに家を出ました。冬期間も山荘は営業しているのか、日帰り入浴ができるのか。いつものごとく、下調べすることもなく、あわただしく出発しました。
家を出て30分ほど、いつも見慣れた緑看板が右手に見えてきました。ここから、木古内市街地までは、5~6分ほどですが、今日は、ここで右折し、林道へと向かいます。
国道からそれて4㎞ほど山奥へ入ったところで、北海道新幹線のトンネル工事をしていました。開通後は見られない、貴重な工事中の写真を1枚パチリ。確実に、北海道にも新幹線が近づいてきていることを実感しました。
工事現場を後にし、およそ1㎞ほど、杉と広葉樹の入り乱れる、森の中の道を進みます。
道は、車1台分の幅しかなく、ところどころ退避エリアが設置されています。カーブやアップダウンもあり、あまりスピードは出せません。しかし、本日は時間に余裕もあり、急ぐ必要もありません。のんびり森のトンネルを楽しんで、目的地へ向かいます。
森の中に、いきなり大きな立派な建物が現れます。こちらが本日の目的地、枕木山荘です。
他に車は1台もとまっていません。あれっ、休業中?
よく見ると、ドアが開いています。営業はしているようです。さて、日帰り入浴は可能なのでしょうか…
一気に安心。日帰り入浴大人500円の表示がありました。
他に、客の姿が見当たらないのが、少々の不安ではありますが、むしろ、秘湯を独り占めできる絶好のチャンスなのかも、と考え勇気を出して山荘内へ。
だ~れもいません。
「こんにちはー」。声をかけても応答がありません。
左手にある、「受付」は、前に大きな荷物が積まれており、現在は、機能していないようです。
もう一度、「こんにちわぁ~!」
ややしばらくして、女性スタッフが右手窓口から現れました。
独特なしゃべり方の女性が、親切に風呂場まで案内してくれます。
山荘内は、静まり返っており、どうも本当に、客は自分ひとりのようです。
瞬く間に男湯まで案内してくださり、いざ入湯です。
脱衣所を覗きますが、やはり人影はありません。秘湯独り占め成功!
とはいえ、こんな大きな風呂に一人で入るのは、なんとなく心細いものです。脱衣所は、少しひんやりとしており、寂しさが一層つのります。
他に客がいないので、温泉内も撮影させてもらいました。
内湯がひとつ、洗い場が3つのこじんまりとした作りです。
しかし、天井が大変高く、解放感があります。
対面には、大きな窓ガラスが設置され、奥深い森の風景を身近に感じながら温泉につかることができます。
浴室に入ったとたん、微かな硫黄のような香りと、ふわんとした温かさが伝わってきました。
体を洗い、さっそく温泉につかります。
お湯の中には、小さな黒いものが浮遊しています。壁に貼られた説明を読むと、源泉からの湯花だそうです。
顎までお湯につかりました。やや熱めの湯、41~42℃くらいでしょうか。温泉内も森も、とても濃厚な静寂に包みこまれています。体を動かした時に生じる、水音くらいしか聞こえません。
濃厚な温泉なのか、肌はすでに、ぬるりんつるんつるんです。
いやぁ、ほんと、来てよかったなぁ~。
20分ほど湯に浸かっていたでしょうか。さすがに少々、のぼせ気味です。
風呂の縁に座り、足浴の状態で深い森の姿を眺めます。
さきほどからず~っと、静かです。あまりの静寂さに、恐ろしさも感じるほどです。つい、「あ~、気持ちぃ」、「ほぁ~」、「ふぅ~」などと、声を発せざるをえなくなります。不思議な感覚です。秘湯を体験できました。
脱衣所は、少し肌寒いのですが、温泉で温まった体からは、汗がどんどん噴出してきます。
汗は止まらないのだけど、冷えるともったいないので、すぐに服を着込みます。
玄関から浴室までを結ぶ廊下です。
昭和の香りが漂っています。おそらく、以前は、大変な賑わいを見せていたのでしょう。
いや、今日は日曜日。もしかしたら、昨夜も大変な賑わいを見せていたのかもしれません。
一休みした後は、昼食を求めて木古内市街を目指します。同じく、出張のたびに気になっていた店があるのです。”のとや”というそば屋です。平日でも、いつも車がいっぱいで、とても繁盛しているのです。ここからは、車ですぐだし、本日は、”のとや”でそばをいただくことにします。
山道を国道まで戻り右折。そのまま車を木古内方面へ走らせること5~6分。左手、海岸沿いに”のとや”はあります。木古内の市街地に入る直前、きれいな大きな白い建物なので、すぐにそれとわかります。
12時ちょうどに到着。すでに、駐車場には車が多数停車しています。
店内へ入ると、すぐさま目につくのが、津軽海峡をを見渡せる大きな窓。
小上がり席だと、ちょうど座った時に、目の高さに海が見渡せます。椅子席でも、同様に海を見るのにちょうどよい高さとなっています。うまい具合につくってあるものです。
この窓のおかげで、店内はとても明るく感じます。
そばが主力商品でしょうが、天ぷらや寿司、一品料理まで多彩な品揃えです。
ランチメニューも多数そろっています。
さて、何を食べようかな。正直、かなり迷います。
やはり、ここは、そばをいただきたいし、写真をみると海鮮丼も魅力的な色彩を放っています。周囲を見渡すと、巨大天ぷらののったそばを食べている人もいます。う~ん。
悩み抜いたあげく、もりそば520円とミニ天丼350円を注文しました。
まだ見ぬ”のとや”の味への期待を胸に、膨らむ空腹感。これがまた、たまりません。
幸せな空腹感が、苦痛の空腹感に変貌をとげることなく、注文の品が運ばれてきました。
麺には、たおやかなコシがあり、強いソバ臭さはありません。これまで味わったことのない、フルーティな印象を受けます。つゆは、甘さ、しょっぱさ控えめで、くどいダシ風味もありません。店の雰囲気同様、おしゃれで品のある味わいです。天丼は、350円とは思えないボリューム。びっくりしました。ナス、カボチャ、エビ、しその葉、いずれもカリッと揚がっていて、タレがとても美味。甘さが優しく効いており、微かな醤油風味がご飯との相性抜群。
食後に日本酒の1本でも、やりたいところでした。
のとやには、温泉、宿泊施設も完備されており、機会があれば、津軽海峡を眺めながら温泉につかり、美味しいそばをいただき、その後にゆっくり酒を飲む旅もしてみたいものです。
秘湯を独り占め、恐ろしさを感じるほどの静寂を体験。
上品でフルーティな、初めて食べる新しいのとやのソバ。
平凡な日曜日に、非凡な体験満載の一日でした。
ごちそうさまでした。